平成31年2月23日(土)

兼題「音」

加藤晴乃
春の川の 瀬音を聞きて 鳥は集ひ ハミングをする 笑まるるよき日

岸志津佳
あさぼらけ 目覚めて開ける 窓の外 風の音聴き 春は近しと

菅原秀太
着せまつる 後ろの人の 音なひに 耳かたむけて 待てりしづかに

笠原雄二
復興の 槌音ひびく 石巻 いつしか春の 雪は降りつつ

シェーン・ハリス
乙女らの 姿はまぶし 荒海の テトラポッドに 寄せ返す音

スニトコ・タチアナ
鈴の音 「アチメ オオオオ」 鎮魂(みたまふり) 一世一代 天皇即位

宮廣美
短繋の ゆらめき消えて しらじらと 日の出まぢかの 松風の音

森下正博
息の音 しじまのなかに 吾一人 座ぜんをくみて めいそうに入る

三宅やよい
「おかへり」と 言へぬひと月 たちてなほ とびらひらけば 足音聞こゆ

高橋英子
音もなく ねしづまりたる 夜のしじま 子らいとほしく ねいきたしかむ

吉野清美
新月の 夜更けにひとり 星々の あまたに光る 音を聞きたり

天之原詩恩
ひとりびとり 命の音は 響合ひ 和歌披講さる 春風のごと

天之原泰洸
山深く 住む人もなき 廃村に 静寂の音 ひとり楽しむ

林 純一
おさなき日 友と戯れ かくれんぼ 息をひそめて 足音を聞く

兼築信行
春の宮に ヴィオラとチェロは 音なひて こころかよはす 父とひめみこ

青柳隆志
音高く 雪の空にぞ 鳴りとよむ 冬の雷 春を呼び来る