令和2年5月24日(日)

兼題「閑居」(題者 青柳隆志)

第一席
森下正博
家居して 世の有様を 眺めつつ 我が来し方を 閑かに思ふ

閑居して不善を為さぬところが君子の徳というもの、
味わい深い一首となりました。

第二席
兼築信行
まがまがし こころしづかに いへゐする 人やはあると おもふコロナり

禍時にも誹諧の気味を忘れぬ大人の風がございます。
かくありたきものです。

第三席
吉野清美
春草の 繁く生ひたる 小庭にて ひねもす過す ひとり静かに

自然は常にかはらぬ中で、猖獗を極める業病が蔓延るという皮肉を
閑かな対比で描いて格調を生じています。

詠進歌

仲谷嘉洋
はれわたる 五月しづかに 家ごもり 青空文庫 こころなぐさむ

笠原雄二
降る雨の 音を聴きつつ 閑かなる 家に籠りて 外(と)を恋ふる日々

菅原秀太
てすさびに あまびゑゑがく いへごもり いつしかなつに うつろひにけり

黒田宜子
たたなづく 青垣山の 草のごと 閑かに風に 揺れたる我ら

スニトコ・タチアナ
久方の 岩戸開けし 昔より 変はらぬものは 閑居の心

宮 廣美
鍵させと いひおき わが背いでゆきて しづかにひとり 茶をすする午後

森下正博
家居して 世の有様を 眺めつつ 我が来し方を 閑かに思ふ

高橋英子
ひのひかり こひしかりけり いへゐして まどをしづかに あけそらをみる

三宅やよい
いつの世も 自然に寄りそひ 歌よめば こころのうちは 閑居なりけり

吉野清美
春草の 繁く生ひたる 小庭にて ひねもす過す ひとり静かに

林 純一
枝にさへ 風もかよはぬ すみかにて 思ひぞ繁き 世の憂きふしを

大原 稔
家に居て 人絶えし道 貨物車は 花踏み行くを しづかに眺む

兼築信行
まがまがし こころしづかに いへゐする 人やはあると おもふコロナり

青柳隆志
閑居して 見ぬ世の友に あふここち 画面越しには あぢははれぬを