「歌はただよみあげもし、詠じもしたるに、なにとなくえんにもあはれにもきこゆる事のあるなるべし」 藤原俊成

2015 披講歌一覧

  • HOME »
  • 2015 披講歌一覧

平成27年披講学習会歌会始「本」

①甲調  齋藤瑠花 *
絵本よみし日はあくる間の夢と去り現をうんと輝かんとす

②甲調  林 純一 **(第二席)
かしこしなふりにし世々に色かへぬ松ぞ日本のまことなりけり

③甲調  中村孝之 *
書棚みる探し求める古書の群遠のく記憶あの本いづこ

④乙調 大原 稔 *
国々の昼夜を越える深夜便本読むうちに日付線過ぐ

⑤乙調 兼築信行
をさなき日幾たびとなく飽かず見し絵本の中のやまたのおろち

⑥乙調 青柳隆志 **(第二席)
綴じしろに針金一本通したる終戦の年の岩波文庫

⑦上甲調 鈴木映見加 ****(第一席)
寝返りをうちたる我に本閉づる音が届きぬ襖をぬけて

⑧上甲調 多田知代子 **(第二席)
絶えがちのかの声もありいざ給へ音読の会は三年目なり

⑨甲調 阿部幸子 *
なつかしき友の名前を図書館のふと広げたる本に見つける

 

武蔵御嶽神社 献詠披講

夏日同詠風和歌十七首(懐紙十四首、短冊三首)

(甲調)埼玉県 加藤晴乃
風渡る水面に浮かぶ桜花花弁ひとひら我のもとにも

(甲調)東京都 高橋栄子
背なの子は寝息かすかに夕暮れの風と歌ふは舞ふ落ち葉たち

(甲調)東京都 伊藤久乃
五十鈴川ほし降るあした風渡りわが身に染むる神鶏(しんけい)の声

(甲調)山梨県 天之原泰洸
雪残る高き峯より吹き下ろすまつさらな風心をあらふ

(甲調)山梨県 天之原詩恩
天翔る風神様のお告げ文空に大きくすぢ雲の書く

(甲調)東京都 井沢真紀
きふね川龍神のゐますせせらぎを風は下りてあじさゐのたき

(乙調)東京都 ハリス・シェーン
元出雲の田居のうへなる鱗雲槙の葉ゆする秋のはつかぜ

(乙調)東京都 金住昌美
吹く風にたかねの雲もはれ行きて祈る人々音禅法要

(乙調)東京都 吉野清美
花散らす風にあらがひ急ぎ行くこひしき人の待つあの店へ

(乙調)東京都 大原稔
かなかなの啼く山かげのそま道に風よりほかは通ふものなし

(上甲調)埼玉県 菅原秀太
振り向けば萩もうつろひ秋風のまにまに去りし君の背を追ふ

(甲調)千葉県 青柳隆志
きざはしをのぼりのぼりて見はるかす琴平の町ゆ春の風ふく

(乙調二反)東京都 林純一
風渡りさやぐ浅茅の末葉より露散りそむる秋の村雲

(上甲調二反、甲調一反)埼玉県 兼築信行
おほくちの真神導く御岳やま雲吹き払ふ風のはげしさ

【短冊披講】
(乙調)山口恵理
ペダル漕ぐ足緩むれば雑踏に髪たなびかす甘き潮風

(乙調)鈴木映見加
たまゆらに吹き寄する風とらへむと幼な手を伸ぶいだかれしまま

(乙調)三宅やよい
「風邪ひくよ」毛布をかける母の声遠くに聞きて眠りおちゆく

 

売豆紀神社 献詠披講

秋日同詠結和歌 十七首

(甲調)埼玉県 加藤晴乃
八雲立つ出雲の宮の神占(かみうら)を斎垣(いがき)に結ぶ幸多かれと

(甲調)東京都 伊藤久乃
縁結びほどけて新たな縁つなぎめぐりうつろふ人の世をかし

(甲調)東京都 高橋栄子
連綿と親より子へと結びこし血こそ妙なる息吹の姿

(甲調)東京都 金住昌美
振り返るいとまもみせぬ夫(つま)の背にえにしを結び神楽鈴鳴る

(甲調)東京都 シェーン・ハリス
美保造緑の木々に青き空夫婦の結び神に伝へむ

(甲調)埼玉県 菅原秀太
幽(かく)れたることをあつめし御社の結びの神に問ひし君が名

(乙調)東京都 中村孝之
かりそめのつゆのしづくにおぼほしくこよひわが身に夕霧結ぶ

(乙調)神奈川県 鈴木映見加
手際よく帯を結びて息ひとつ深くつきたる母の気配す

(乙調)東京都 井沢真紀
榊葉に麻紐結ぶ採(と)り物を神の斎庭(ゆにわ)に捧げまつらん

(乙調)山梨県 天之原泰洸
天照らす瑞穂の国に健やかに稲穂は育ち実りを結ぶ

(乙調)山梨県 天之原詩恩
八百万の神を結べる大社風はさやかに雲は八雲に

(乙調)埼玉県 大野祐子
宍道湖の夕焼けの空は神さびてむすぼほれたる心をぞ解く

(上甲調)東京都 吉野清美
見はるかす稲佐の浜に立つ虹は天地結ぶ神のひもろぎ

(上甲調)東京都 大原 稔
千早振る神代の宮の松の葉に結びし露のさやに凍れる

(甲調)東京都 林 純一
天地を結びし玉の言の葉に万代照らす光をぞ見む

(乙調二反)千葉県 青柳隆志
神ながら結び籠めてし衣々の色あざやかに夫婦いでたつ

(上甲調・上甲調・甲調)埼玉県 兼築信行
簸(ひ)の河や遠き流れをむすぶ手に玉なる歌は限り知られず

 

出雲大社 献詠披講

秋日於出雲大社御神前詠結和歌(甲調)埼玉県兼築信行
やくもたつ出雲杵築の大やしろ結ぶえにしはときはかきはに

 

源心庵歌合

源心庵歌合歌々作者付

判者 兼築信行

池水鳥 しのばすの池の水面に朝まだき浮き寝の鳥も顔をあらへり
忍恋 空しくて過ぐる日数は重なりてさても口にはいたしかねつつ

左方

方人頭 伊藤久乃

池水鳥 をし鳥は仲もよさげに池にゐてわれの心は風にこほれり
忍恋 あたためし言の葉胸の奥深く口に出ださず遠き君の背

方人 天之原詩恩

池水鳥 西方の浄土の池の水鳥は今ぞ飛び立つ金砂をけりて
忍恋 大空の陽に晒したし胸の内冬のこもりを終へるころには

方人 金住昌美

池水鳥 たはむるる白き鷺あり源心庵池の水面に月もうつりて
忍恋 お下げ髪結ひし昔はわが思ひ告げ難かりき行船公園

講師 大原 稔

池水鳥 不忍の池に張りたるうすごほりわりてや雁は山さしてとぶ
忍恋 しのぶぐさこのはがくれのそののちは雪まにうづむ恋ごころかな

発声 青柳隆志

池水鳥 こほりとぢし池のをじまにひとりゐるとりはわが身とおもひつるかも
忍恋 たれゆゑにかくもくるしきますらをがおもひこがれてしのびかねつも

読師 荒川克美

池水鳥 水鳥の姿に偲ぶいにしへのみぬま神池湧き出づる見つ
忍恋 冬の庭に真白き雪は積もれども熱き思ひに花ひらけなむ

念人 高野祐子

池水鳥 空襲に焼かれしひとを埋めしてふこの庭の池に水鳥あそぶ
忍恋 いつの日か逢ふこともがな面影を胸にしまひて髪はましろに

念人 田上富美子

池水鳥 山を映す池の水面にゆるやかな波紋をたてて鴨はあそべり
忍恋 この先の君住む部屋に灯りともり心ときめく道遠けれど

念人 土屋知人

池水鳥 ながむれば池にあそべる水鳥ををさなき君と思ひかさぬる
忍恋 まどろみて恋しき人を観音に重ねし我はさびしかりけり

念人 山本美津子

池水鳥 ふゆ立ちて池のみなもの母子鴨もみぢをうつし波紋をかざる

右方

方人頭 吉野清美

池水鳥 いたづらに羽をうち振る池の鳥さざ波は立つ我がこころにも
忍恋 今日も又胸にひそめし思ひをば言の葉にして書きつらねきて

方人 井沢真紀

池水鳥 白妙の穂高を映す真寸鏡凍らぬ池に鴨はかづけり
忍恋 高砂や友のとなりに笑ふ君こころざはめくやらむかたなし

方人 高橋栄子

池水鳥 こんこんと湧き出する池のぬくもりにあそぶ水鳥陽は沈みゆく
忍恋 ぬばたまの夜にしのべばもゆる身をさゆるがごとく月の影さす

講師 天之原泰洸

池水鳥 木の葉散りうすごほり張る山の池にふゆ支度せり鳥の毛ごろも
忍恋 目の前の海原凪ぎて鎮まれど我が胸内に波はさかまく

発声 シェーン・ハリス

池水鳥 あらし山に冬は来ぬらし白き鳥大沢の池に一羽おりゐる
忍恋 君ゆゑの恋はつもりて信濃なる穂高の峯にゆきはふりつつ

読師 菅原秀太

池水鳥 浮沼の池の水面の月かげをみだす水鳥そでを濡らせり
忍恋 ともし火をうつす聖夜に忍ぶれば恋はなほさらはげしくもえる

念人 笠原雄二

池水鳥 みづとりは池の水面をゆらしゆく時をわすれて我たたずめり
忍恋 落葉たき出ださぬふみも燃やしけり煙となりてかぜにちりゆく

念人 加賀谷早苗

池水鳥 流れゆく水鳥とほく波光り亡き人思ふ陽はあたたかし

念人 加藤晴乃

池水鳥 渡り来し鴨ら集へり池の面に木枯らししのぎ翼休めて
忍恋 み雪降る聖夜の街に巡り合ふ想ひ届かぬ君は遠くて

念人 鈴木映見加

池水鳥 朝日差す池の水面のつがひ鳥翳あはあはとに消ゆる

念人 多田知代子

池水鳥 水面ゆく鴨は乱れず連りて誰が兵法ぞへんげん布陣
忍恋 こぼるるをな問ひ給ひそ故郷を熱く語らふ憎き君ゆゑ

念人 林 純一

池水鳥 池水も空も一つに澄む月の波の最中に鳥のただよふ
忍恋 来ぬ人を待つにかひなし小夜ふけてとぼそに聞こゆ松風のおと

PAGETOP
Copyright © 星と森披講学習会 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.