令和2年9月23日(水)

兼題「雲」(題者 青柳隆志)

第一席
林 純一
秋の空 雲の行方に 我は問ふ ふるさとの母よ つつがなかれと

*行く雲に思ひを込めたり。いとすぐれたり。

第二席
宮 廣美
ノンちゃんの 乗る雲いづこ そのかみの 書(ふみ)思ひつつ 青空見上ぐ

*なつかしくもあるかな。

第三席
三宅やよい
ゆきあひの 空うつしたる ビル見上げ 新たな一日(ひとひ) たしだしに生く

*「行き合ひ」の雲、時にあひてつきづきし。「たしだし」の古語いとめづらし。

別格
兼築信行
みんなみの うるまのしまに そらひくく うかぶしらくも ゆくへしらずも

*おもろおもろ、にらいかない

詠進歌

仲谷嘉洋
朝ぐもや 深山をはなれ むれをなし あかねさす田の うへをながるる

スニトコ・タチアナ
天雲に ささがに登る 「わが背子が 来るべき」かな いにしへ祈り

森下正博
たかき山に のぼれば見ゆる 雲の海 朝陽にひかる 嶺は島々

菅原秀太
あきのよや くまなくてらす つきかげを くもがかくして あはれはまされり

宮 廣美
ノンちゃんの 乗る雲いづこ そのかみの 書(ふみ)思ひつつ 青空見上ぐ

三宅やよい
ゆきあひの 空うつしたる ビル見上げ 新たな一日(ひとひ) たしだしに生く

荒川克美
果てもなく 続く野原に 雲低く 列車は進む スコットランド

岸 志津佳
連なりて 流るる雲に 帯を書く あの飛行機の 行方はいづこ

高橋英子
とりどりの 花と浮かべる 白き雲 ひとつ残さず 君にささげむ

吉野清美
幾すぢか しろき尾をひき はやぶさの ごとあまがける ブルーインパルス

天之原泰洸
やつがたけ さしてよこたふ あまのがは くものみふねを ゆめにさしゆく

林 純一
秋の空 雲の行方に 我は問ふ ふるさとの母よ つつがなかれと

大原 稔
とつくにへ とびゆくそらに つきさえて 機のかげしるき くものうみかな

兼築信行
みんなみの うるまのしまに そらひくく うかぶしらくも ゆくへしらずも

青柳隆志
重なれる 雲をながめて 亡き母に 思ひをはせて 新盆迎ふ

笠原雄二
夕焼けの 色に染まれる 峰雲の ゆくへはいづこ 家路を急ぐ