令和2年10月28日(水)
兼題「慈」(題者 兼築信行先生、選者 青柳隆志先生)
第一席
林 純一
ユスリカの 生命(いのち)をさへも 慈しみ 歌ひたまひき 大后の宮
*生命あるもののかなしさ早春の光のなかに揺り蚊の舞ふ(平成21年歌会始「生」皇后陛下御歌)
御歌絶唱なり。いのちあり。
第二席
天之原詩恩
三陸の しろきはまぎく いつくしむ おほききさいの みやのまなざし
ゆかしやな、仙洞御所のこはまぎく。
第三席
大原 稔
やみのよの はるけきひかり 慈氏尊の おもひめぐらす ながきゆびさき
慈氏尊は弥勒なり。この混迷の世を救わんとしたる思惟のさまをよめり。
別格
兼築信行
いつくしみ ふかきとももが いくるみに つみとがうれひ かぎりしられず
*讃美歌312番を平らかに詠みたまふ。
詠進歌
星わにこ
慈しむ 子は七とせの 祝ひ髪に 鹿子絞りを 結ぶ今日かな
笠原雄二
たらちねを 介護の歌を 読むにつけて 慈烏反哺なる 言を思ひぬ
菅原秀太
そまにたち おほひたまへよ みづくさや うきよのたみの わがみのうへを
三宅やよい
慈しむ 間もなく散りし キンモクセイ しぐれはそろり 闇をひきゐる
宮 廣美
“慈しみふかき友なるイェスは”と こぞり歌ひき まなび舎の日々
森下正博
いつくしみの 心を持たば 世の中を 暮らすも安く 楽しくならめ
荒川克美
ひろはれて きたるこねこに いつくしむ ごとくよりそふ うちのおいねこ
岸 志津佳
秋の夜長 我を照らすは 慈しみ 深き色なる 月明りかな
高橋英子
こをもちて のちにさとりぬ いつくしみ いのちはぐくむ ははのこころを
天之原詩恩
三陸の しろきはまぎく いつくしむ おほききさいの みやのまなざし
林 純一
ユスリカの 生命(いのち)をさへも 慈しみ 歌ひたまひき 大后の宮
大原 稔
やみのよの はるけきひかり 慈氏尊の おもひめぐらす ながきゆびさき
兼築信行
いつくしみ ふかきとももが いくるみに つみとがうれひ かぎりしられず
青柳隆志
いつくしみ まどかなりてふ のりのなを おほけなしとは たれかおもはむ
*前大僧正慈円の墨染の一首なり。