令和5年3月22日(水)
早稲田大学にて、百人一首から時代不同歌合を挙行いたしました。
判詞は次のとおりです。


令和五年弥生早稲田大学時代不同歌合

題 春

判者 兼築信行

左方人頭 青栁隆志
念人
講師 荒川克美
発声 田上富美子

右方人頭 大原 稔
方人 森下正博
講師 林 純一
発声 吉野清美
発声(三番) 笠原雄二

一番
左 勝 小野小町
花の色はうつりにけりないたづらにわが身よにふるながめせしまに
右   光孝天皇
君がため春の野に出でて若菜つむわが衣手に雪はふりつつ

右方問云、いといみじき歌なれど、表の意と裏の意とを教へたまへ。
左方答云、表は桜、裏は容姿を言ふ。
右方追云、さらに詳しく知りたきなり。
左方問云、詠み人のまことのわざなりや。
右方答云、年中行事の若菜摘みなり。帝の御歌なれば詳らかならず。
判云、右歌、光孝天皇即位は晩年なれば、御位の詠とは思ひ難し。右方の言、心得難ければ、以左為勝。

二番
左 持 前権中納言匡房
高砂のをのへのさくらさきにけりとやまのかすみたたずもあらなむ
右   伊勢大輔
いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重に匂ひぬるかな

右方問云、尾上の桜、外山の霞、如何。
左方答云、峰と麓となり。
右方申云、思ひ得たり。
左方問云、八重、九重、如何。
右方答云、ことばあそびなり。
判云、左右ともにゆかし。左歌の外山は、当地戸山に通ず。右歌の奈良は、今日客人の来たれる所なり。優劣はかり難し。

三番
左   紀友則
久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ
右 勝 前大僧正行尊
もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし

右方難云、春題なれど、三番、花の歌のみを選べり。
左方陳云、春と言へば花にあらずや。
右方更云、うべなひ得ず。
左方更云、春光、落花を詠む深き趣あり。
右方云、うべし。
左方難云、孤独の歌ならずや。
右方無答。
判云、歌においては優劣なし。されど左方、三番いづれも甲にて披講せるは曲なし。右方、甲乙甲と曲を付けたり。披講のわざ巧みなるをもつて、右為勝。