令和2年4月20日(月)

兼題「ひらく」(題者 青柳隆志)

【特選】
菅原秀太
草紙洗と 名におふ椿 この春は ひらくときけど 見にはゆかれず

選評(青柳隆志)
歌合にゆかりの草紙洗椿を見ることかなわぬ苦衷を詠みて
やや口語めきたれどもしかすがに品あり。

詠進歌

黒田宜子
夜明けころ 汝の瞳 開かねば 心もとなく 今一度寝ぬ

笠原雄二
わざはひの ひびのなかにも しごとあり パソコンひらく いへにゐながら

岸 志津佳
はなびえに 視線おとせば はちうゑの いぶきもあらた ひらけくるみゆ

菅原秀太
草紙洗と 名におふ椿 この春は ひらくときけど 見にはゆかれず

森下正博
繰り返す 災ひの時 人の世の 基礎(もとゐ)を確(しか)と 開き見るべし

高橋英子
わざはひに あらたなるみち ひらかむと おいもわかきも おもひはひとつ

宮 廣美
ふぢのはな あがなひおきて ととせあまり ことしはじめて ひらきそめたり

吉野清美
薄紅の 衣まとひて はなひらく 愛でつつ祈る 恙無き日を

三宅やよい
朝かげの あらたしきみやゐに ひびきたる はらへの祝詞に 岩戸はひらく

林 純一
いつ晴れむ ものとも見えぬ 空おほひ ひらくる花は げにぞゆかしき

大原 稔
いへこもり 花をも知らず ゆく春に みとひらくよを まちてみつらむ

兼築信行
もとめこし ふみひらくとき はしるはしる わづかにみけむ をとめおもはる

青柳隆志
たれこめて 愁眉をひらく こともがな 歌の徳にて 世を平らけく