今年も残すところ2ヶ月となりました。あっという間に年の瀬を迎えそうな勢いです。

当会では毎年年末に歌会を催していますが、今年は少し趣向を変えて歌合を開催することになりました。

和歌を詠み合い勝敗を決めるあれですが、さぞや優美で雅やかなイベントと思いきや、サッカーやラグビーにも負けない白熱したものであることが分かりました。

というのも、昨日のお稽古では、歌合の流れを理解するために、左方(ひだりかた)、右方(みぎかた)のチームに分かれ百人一首を用いて歌合を経験したのですが、実際に体験してみると、年甲斐もなく負けず嫌いな性格に火がついてしまったのです。

まずは簡単にルール説明。

  1. 歌題に沿った和歌を百人一首の中から先攻は一首選ぶ。後攻は、先攻の和歌と重なった場合を考慮し二首選ぶ。
  2. 先攻、選んだ和歌を披講。
  3. 後攻、先攻とは別の選んだ和歌を披講。
  4. 審査員である判者(はんざ)が、審査理由である判詞(はんし)とともに勝敗を発表。引き分けの場合は「持(じ)」

さて、最初の題は「紅葉」

百人一首の中に「紅葉」が詠まれた歌は六首。

05 奥山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の 声聞くときぞ 秋はかなしき(猿丸太夫)
17 ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは(在原業平朝臣)
24 このたびは 幣もとりあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに(菅家)
26 小倉山 峰のもみぢ葉 こころあらば 今ひとたびの みゆき待たなむ(貞信公)
32 山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり(春道列樹)
69 嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 龍田の川の 錦なりけり(能因法師)

皆様でしたら、どれを選ばれますか?
鹿の声も風情がありますね。それともやはり紅葉といえば竜田川?
昨日の左方・右方は次の和歌を選びました。

「紅葉」

左 菅公
「このたびは幣もとりあへず手向山紅葉の錦神のまにまに」

右 貞信公。
「小倉山峰のもみぢ葉心あらばいまひとたびのみゆきまたなむ」

さてどちらの勝ちでしょうか?

審査員である判者は、歌の内容、歌人の格、披講の良し悪し等々を踏まえて勝敗を決め、併せてその理由を述べます。

上記の場合ですと……

左方は神歌であり、右方は天皇の訪れの歌。

歌合のはじめにはやはり神歌が相応しい!

よって左方の勝ちとする。

……となったわけです。

今回の歌合の詳細は、判者を務められた青柳教授の記事をご覧頂いたほうが間違いございませんので、こちらからどうぞ。

さて、この判者という役は、和歌に対する造詣はもちろん、教養があり、社会的身分も高くなくてはいけないそうです。勝敗の理由が、単純に「なんとなく好き」というものではなく、合理的で説得力のあるものでなければ、負けた方が納得しませんからね。90歳の藤原俊成に勝敗を決められたら歌人は何も反論はできないことでしょう。「徹子の部屋」で黒柳さんに何を言われても素直に従うしかないようなものです(笑)

お稽古の中での体験でしたが、勝てば嬉しく、負ければ悔しく、緊張と興奮、仲間との絆と対戦相手との友情というドラマ。これが自詠のものとなればその興奮はいかばかり。天徳歌合で負けたショックで命を失った壬生忠見や、読み間違えた源博雅は他人事ではなくなります。

歌合、それは和歌のみを武器とする心ゆかしき戦い。

ご興味ございませんか?

当会でもあまり歌合をすることはありません。見学など、この機会にどうぞお気軽にお問い合わせください。
詳細はこちらよりどうぞ。お待ち申し上げております。